記憶の彼方へ
毎年、この季節になると思い出す、
なんて、そんな記憶がある人は幸せなのか不幸なのか?
大失恋の記憶も三年経てば「そんなことあったかな」と忘却することのできる僕という人間は幸せなのか?
一級建築士試験が近いことを思い出したのは、このブログをいまでも見つけてくれる方がいてそれがこの時期に増えているといったことを、メールの通知が教えてくれたからである。
走馬灯のように自分の当時の記憶が脳裏に浮かぶ。
ある程度の時間が経って、思い出すほどに今ではもう二度とあんなハードなことはできないしもう一度受験しても全く受かる気はしていない。
当時すさまじく悪化していた痔も最近は経過良好だ。時間はあらゆるもの全てを癒す。
基本的に最後には受かることしか考えていなかったし、無理矢理に「一級建築士取れない」という選択肢を脳から削除していた受験中。
でも、一度だけ本気で絶望したことがある。
2017年製図試験リゾートホテルが課題だった年、本試験問題を目の当たりにし愕然とし、エスキスの最中にあろうことか僕は、
「自分は一生受からない、こんな度肝を抜く問題がこれから毎年出るようになるのなら、自分は永遠に受かることはできない!」
と、底無しに沸いてくる怯えにガチガチと歯を鳴らしながら考えた。
それでもなぜかその年に合格できたのだから人生はわからない。
思えば、今までかけた時間と労力が一瞬で霧散してしまう可能性があることに絶望と恐怖を感じていても、なぜか最後のところでさじを投げていなかった。
心の中で泣きながらなぜかペンを握る手は休むことなく動かし続けた。
チャレンジしてよかった、と思う。
ただ資格に合格した事実だけで、スーパーサイヤ人になるみたいに突然自分の能力がかさ上げされたり何かが劇的に変化することはない、たぶん。
それでも、あの日々まるまるひっくるめて、今の僕にはちょっとした心の拠り所になっている。
「諦めたらそこで試合終了ですよ……か」