僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

映画【劇場】は痛かった

加入したてのアマゾンプライムで、又吉直樹原作の【劇場】を視聴した。
面白かった。
そして痛かった。

主演の山崎賢人がとても良かった。
ずっと僕の中での山崎賢人はラブコメの王子のイメージだったが、それはジジイの網膜に焼き付いたただの残像だと知った。進化がやばすぎる。
キングダムを観たときに薄ら感じたものが確信に変わったよ。これから山崎賢人推し!!

山崎賢人の低く抑えたナレーションを聞いて、あの頃を想起させられた。
そう、映画【GO】の窪塚洋介もまた素晴らしかった。
当時大学生だった僕。めちゃめちゃはまった作品だった。
監督は行定勲。この系統の青春映画は最高だ。
二度とは戻りたくないけれど、映画で追体験させられるとああーーってなる種類の若かりし頃。思い出させてくれる。


当時、GOを友達に勧めた。面白いから観てみなって。「観たけどちょっと暗かったなぁ」という感想が返ってきたとき、共感を得られない残念さと、あと、うらやましいと思った。
暗かった、という一言の感想で終わらせることができる彼の今までの人生が、この上なく眩しく見えてしまった。

でも僕のような人間にとって、このような作品は光だと思う。
よくわからないが、心の中を照らす一寸の光。滋養。





田舎から上京して、下北沢の安アパートに住んだ。

高校から憧れていたあの子も東京に来ていたことを知った。

同じ高校から東京に来ているメンバーで何回か飲み会をする機会があり、彼女もそこに来ていた。

高校時代の僕だったら臆して話しかけられなかっただろうと思う。でも、地元から開放された高揚感と東京での孤独感がない混ぜになって、僕の背中を押した。話しかけてみると彼女の屈託のない笑顔を見ることができた。気がついたら彼女と連絡先を交換するまでに至っていた。

彼女も孤独を感じていたのかもしれない。そんな気配を纏っていた。
遠くて口も聞けない存在。僕にとって彼女はそうだったはずだ。すくなくとも地元にいたままでは。

下北に住んでいるんだと僕はどもりながら話した。
彼女は屈託のない笑顔で、
「あ、下北にさ、美味しい串焼き屋さんがあるんだよねー、意外と穴場なの、知ってる?」
僕は知らないと答えた。
今度行こうよ、と彼女は言った。

ふたりきりで飲んだとき、彼女の口から打ち明け話を聞いた。
聞きながら、でも、なんで僕にこんな話をするのだろうと、頭の中はそのことばかりが巡っていた。

「好きだったんだけどね、彼、結婚してたんだ」

「え、誰が」

「家を借りたときに、案内してくれた不動産会社のひと。連絡もらって、やさしいし年上だし素敵だなって思ってたんだけど…」

「不倫ってこと?」

「…そうみたい、ばかだよね、わたし」

「…ばかだなんて」

そんな話を、聞きたくなかった。
勝手だけど、本当に勝手なんだけど。
僕には手の届かないこの人は、誰にとってもあこがれであってそのままでいてほしかった。

くそみたいなくだらない男にだまされてやられて、奥さんがいるだなんて言われている彼女に「間違えてるよ」って言ってやりたかった。

言えるはずなかった。

当たり障りのない慰めの言葉を吐いて、駅前で別れた。
彼女に嫌われること。
それが僕のもっとも恐れていること。

自転車を漕ぐ帰り道で蔦屋に寄った。

この気分に効きそうなDVDとCDを何枚か借りた。

幸いにも明日は休みだった。




そんなどうでもいい、めちゃ過去すぎて妄想かも定かではない記憶を唐突に思い出した。
もちろん、映画とは全く関係ない。


劇場

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