僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

不動産業界をテーマにした小説

「狭小邸宅」という小説を読んだ。
少し前、住宅や不動産業界を主題にしたフィクションが読みたくて探していた時に見つけた本だった。でもこのあらすじを読んで、当時小説のストーリーに癒しやちょっとした救いのようなものを探していた私はどうも食指が伸びなかった。

狭小邸宅 (集英社文庫)

狭小邸宅 (集英社文庫)

学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった…。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。第36回すばる文学賞受賞作。

その時期によって読みたい本が違う。
小説、ビジネス本、歴史、エッセイ。。
小説の中でも純文学系、エンタメ、さらに細かく恋愛、ミステリー、お仕事もの。。
自分のモードによって読みたい本、どうしても読めない(集中できない)本が定期的に変わってしまうことを理解してから、いつも三冊ばかりの本を用意して気分によって手に取る本を変えたりしている。

前置きは終わり。

精神的な余裕ができた時期にこの小説を読んでみた。一度ページを開いたらあとは一気読みだった。面白かった。
結論から言うと、自分が警戒していたほど重めな内容だと私には思えなかった。(似たような環境に居たこともあったから、私の中の普通と小説に書かれていたことが大きくずれてはいなかったことがその原因だと思う。共通認識としての「普通の働き方」とはどのようなものなのだろうかと真剣に考えさせられた)
自分にとっては読後感は悪くなかった。
確かに不動産業界で馬車馬のように働くストーリー、気分は沈むかもしれない。でもそれ以上に、人はなんのために働くのか、なんのために生きていくのか、遠回しにそういうことの意義を考えさせてくれた気がする。
奇妙だけれど、読み終わったあとに一片の救いのようなものを感じることができた。いや、あくまで私の解釈がそうさせたということなのだけれど。

仕事で成功した人も、この小説ほどわかりやすくはなくても、見えない何かを差し出してその成功を得ている。得るものと失うものはトレードオフの関係で、絶対にすべてを手の中に得ることはできないと気づいた時に、あなたは何を選ぶ?そして私は何を捨てる?

いい小説でした。