僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

天龍院亜希子の日記を読んだ。

小説の感想文です。


『天龍院亜希子の日記』

社会人になった主人公が昔の学校の同級生である天龍院亜希子のブログをたまたま見つける。
過去に知り合っているけれど、あまり深く関わってこなかったあの人のブログを読む。当たり前だけど、それぞれ交わらないところで僕たちの人生は続いていく。SNSなんかで様々な人の近況を勝手に受け取ってしまう時代だからこそ面白く読めた。

僕自身、リアルで接しているある人の個人的なブログを発見し、この人はいつもあんな感じだけれど、片方の世界ではこんなことを考えてるのか、なんてことを思ったりした経験がある。
大人になってしばらく経って、あれ、そういえば最近というかこのところずっと、普段の生活の中で人の本音のようなものに触れてないぞと思った。あの青い春は遠い昔。たまに奇跡的な夜のサシ飲みで感情があふれることはあるけれど、いつのまにか大人になるとはこのことだったのか。
(ひょっとしたらこんなさみしいことを思っているのは近所で僕だけかもしれないけれど、それをいま正直に告白できるのも、文章のかたちをとっているからだ)
だからこそ、時に、デジタルなコミュニケーションツールを介したやりとりが対面よりも情緒的だと感じることがある。

デジタルの世界の中だけで一方的に受け取り、あるいは差し出す。直接交わることはもしかしたらこの先ずっとないのかもしれない。それでも、あの人の存在を画面越しに確認することですこしなぜか励まされたりして。
それはとても不思議なのだけれど。
つながっているのか、いないのか、曖昧な緩やかな関係。 関係?
その曖昧なくらいが、いまの僕たちにはかえって心地いいのかもしれない。

小説の文章はテンポがよく読みやすい。そしてその年代の感じる仕事絡まりでの苦々しさが伝わってくる。
同僚との関係とかなんか、僕にも、記憶の彼方にそんな頃があったことを思い出させてくれた。いい。

天龍院亜希子の日記

天龍院亜希子の日記