僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

やったろうじゃん!

前回からの流れで、今回も高校野球がテーマです。

この度オススメしたいのは漫画です。

僕は高校野球をやっていた時、常々、漫画『タッチ』の世界観、かわいい女子のいる高校野球というものが許せませんでした。
リア充の皆様がリア充を許せない気持ちそのものです。
そんなもんじゃないだろ、大多数の高校球児にとってのリアルな高校野球ってのは。。
心のなかでそう叫んでいました。

今回紹介する漫画は、そんなラブコメ的要素一切なしのガチめな高校野球?ストーリーです。

弱小な高校の野球部に、挫折感を引きずった影のあるスパルタなコーチがやってきて、紆余曲折を経て甲子園出場を目指していくという話です。
おおざっぱなストーリーは上記のとおりです。
が!リアル高校球児だった僕には心に染みる描写がこれでもかとあったのです。
努力してもレギュラーの座を奪われてしまう3年生の心情、強豪校との練習試合で練習の積み重ねも空しくがつんがつんと打ち込まれるピッチャー。『俺じゃ…駄目だ…』という台詞がなぜか僕の心を震わせました。
結局、彼はピッチャーではなくキャッチャーにコンバートするのですが、その一人一人の葛藤を描いた場面がたまらない!!!今まで読んだ少年マンガにはなかったこの描写がすごくよかった!
野球は爽やかなだけじゃない。当人たちの感じた痛み、迷い、悩み、嫉妬、葛藤、そして喜びや楽しさ、人間なら誰もが感じる基本的な感情がそこには描かれていました。

ちなみに2巻くらいまでは女子マネージャーでヒロイン的な女の子がちょこちょこ出てくるのですが、回を追う毎にモブキャラのような扱いになっていき、そのうち完全に男しか出てこなくなりました。。

しかし、それこそが僕がやったろうじゃんにはまった理由でもありました。ガチで野球に特化した内容が当時の僕にははまったのです。
許せない、かわいいマネージャーと当然のように付き合うエースピッチャーは許せない。と、ライパチの僕は8月の下校時に唇を噛んだ、そんな頃もありました。

僕のようなモブキャラ的人間は、エースピッチャー的ヒーローと学校のヒロインの恋を応援できるほどの精神的余裕がありませんでした。そんな僕に『やったろうじゃん!』は一縷の励ましを与えてくれたと思います。泥臭くても、それでもいいんだ、と。

某タッチやH2を穏やかな気持ちで読めるようになったのは、野球からすっぱり足を洗って5年も経った頃だったでしょうか。
自分とは切り離された世界の話として読むことができれば、こいつはかなり面白いストーリーです。

距離が離れて、客観的に観ることができれば、人のサクセスや努力の跡も素直に認められるのですね。あの頃のよくわからない呪縛的なものから解放され、年をとるっていいなぁ、なんて思ってしまいました。