僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

一級建築士設計製図試験、後日談。

2017年一級建築士設計製図試験から一夜明け、僕は、肉体的な疲労か精神的なものかわからないけれどべったりと身体に何か塗りたくられたような身体の重さをを引きずっていた。

昨日は、早々と会場を後にし、再現図は書かないと誓った。どうせみせられたものじゃない。学校に講評してもらうまでもなく、今年はもう脈がない。

しかし、家に帰りビールを飲みながらインターネットに接続すると、今年の試験は去年より難しいとする論調のものを多数見かけた。中には、新試験始まって以来の高難易度と断じているものもあった。

日本のどこかで一緒に試験を受けていた人たちのつぶやきを眺めていると、これはひょっとしたら、自分のプランもまるっきり的外れではないのではないかという思いがゆっくりと頭をもたげてきた。のそり、のそりと。
そんな自分を現金なものだと自嘲気味に笑った。それでいて、インターネットの匿名の情報を探す指は止まらなかった。

L型が正解のひとつ?と書いてあった。

僕は鞄の奥でくしゃくしゃになっていた自分のエスキス用紙を引っ張り出してみた。
本試験の間、練習ではやったことのないいびつなプランだと絶望しながら書いた僕の2階平面図は、そのL型と呼ばれている形状だった。

結局、僕は答案の復元を行うことにした。
少しでも可能性があると頭に刷り込まれてしまったら、もうそれを忘れて生活するのは難しいことだった。どうせ頭の片隅から離れないのであれば、机に正面から向かって再現図を起こした方が、何倍も有意義だろう。

もしかしたらと淡い期待を抱いてしまい、試験元に委ねられた結果を犬のようにを待つ。
こんなに悶々として、スマートフォンをいつも気にして新たな情報がないかとさまよう。

これをもしも恋に例えるなら、それはとても情けなく、振られても諦めきれないストーカー気質の慕情だと、僕は自分自身に呆れるようだった。


さて、復元した図面は南東方向に向けたL型の2階平面、1階にレストラン、コンセプトルーム、ラウンジ、ショップ等を配置、地下には大浴場、トレーニングルーム、機械室関係と階の振り分けは要求を網羅していて問題はなさそうだった。

インターネット上の資料と照らし合わせてみても、建築計画の内容は見劣りするものではないと思えた。

ただ、細かい部分での文字の抜けや、外部計画の詰めが甘いといったものがかなりあり、正直、2016年の本試験であれば落ちているであろう内容だった。言い換えれば、去年より書き込みを増やすと決意して臨んだにも関わらず、去年と同じ程度の密度で終わったということだ。それは当日に僕が駄目だと感じた理由でもある。

しかし、よく考えたら、今回の試験内容で前年並みにばっちり書き上げられた人がどれだけいるのだろうか?
設計製図試験のボーダーが想像以上に高いことは、去年の経験から理解している。でも、僕はそれを知ってから1年間訓練を重ねてきたのだ。自分がここまでしか出来なかったのだから、自分以外の皆が揃って去年のように抜けなく仕上げることが出来たとはどうしても思えなかった。

僕のその感覚が正しいのか、それとも思い上がりという名の勘違いなのか、合格発表の当日まで祈って待つしかなかった。

終わっていたはずだった。でも、まだ希望があるかもしれない。第三者のつぶやきに希望を抱いてしまった僕は、ここから2ヶ月の間、苦しむことになる。