僕と誰かの日常の記録/妄想文章

個人的なブログ。永遠のど素人が一級建築士試験を受けてみた。小説や映画の感想。思いつきで書く創作的文章など。

完璧な図面などというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。

僕がまだ日建生だった頃、担当の講師は僕に向かってそう言った。僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少なくともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。六時間半の間に提出した回答群の中に完璧な図面なんて存在しない、と。
しかし、それでもやはり製図をするという段になると、いつも絶望的な気持ちに襲われることになった。僕に書くことのできる領域はあまりにも限られたものだったからだ。例えば太陽光について何か表現ができたとしても、太陽熱については何も書けないかもしれない。そういうことだ。


以上、村上春樹風の歌を聴け』の冒頭風に一級建築士設計製図試験を語ってみた。


ただ、冗談ではなく、僕の実感としては、本当に上に書いたようなたとえがしっくりとくる。毎年7月に公表される設計製図試験課題の、その指定された範囲にあってさえ、エスキスのパターンについて考えるとふいに絶望的な感覚に襲われる時がある。また、記述での問いを想定して対策すればするほど、出題の可能性に果てがないことに気付く。それらのことを思い、恐怖を感じるのは、大抵眠れない夜なのだけれど。


僕のことについて書こう。
村上春樹の某長編小説の主人公に共感する三十路の建築士である。一級建築士試験が目下の関心事であり、今年は2回目の設計製図試験を控えている。
設計製図試験が2回目ということは、つまり…そういうことだ。


今も僕は課題文の言い回しを注意深く読み取り、エスキスをこなしながらこの文章を書いている。今年こそはと誰にも言えない決意を秘めて。